研究内容について
運動・環境生理学
運動・環境生理学は身体内部・外部の物理的・化学的な刺激や変化を検出し、それらに対する生体組織や器官の反応や、ある状態へ適応するための生理的機序を解明する学問です。ここでは、体温調節、呼吸・循環調節機能を対象として生体情報を収集し、身体内部・外部の変化に対する反応性を評価することで生理的機序を明らかにしようとしています。また、能動的・受動的な運動、意識的・無意識的な運動、自発的・自動的な運動など、様々な運動様式による身体活動と生体調節機能の関係を追求しています。
生理機能における包摂性と多様性を理解し、生体情報から人が有する能力を最大限に活かせるシステムを探究しています。
認知神経科学
認知神経科学は、心理/認知的機能が脳でどのように生み出されるかという疑問に答えようとする学問です。ここでは、脳波や近赤外光線分光法(NIRS)等を用いた脳からの生体情報を計測する方法と、経頭蓋磁気刺激法(TMS)や経頭蓋電気刺激法(tES)を用いて脳に刺激を与え、その反応性を計測する方法により、運動制御・運動学習・感覚・認知等に関する脳内メカニズムの解明を目指して研究を進めています。また、ハイスピードカメラを用いて様々な動作を対象とし、実際にどのように運動学習が進んでいるのか、動作メカニズムに関する研究も行なっています。
生体力学
生体力学は、ヒトの構造や身体が動く仕組みについて、解剖学、生理学、力学的な視点からの知識に基づき、力学的な特性や考え方を用いて解明する学問です。
ヒトの動きを数量的に捉える研究手法として、動作解析など、動きを複数のハイスピードカメラで撮影し、空間内座標から二次元あるいは三次元的に外面から定量化する運動学的手法と、筋電図計測など、どのような力によって動きが生み出されているのか、その原因を捉える運動力学的手法があります。双方を兼ね合わせることによって、随意的な運動制御のメカニズムの解明に迫ります。
感覚を含む運動スキルについて、幼少期の子どもたちから高齢者までを対象に、日常生活から医療やリハビリテーション、人間工学、教育現場への幅広い応用が考えられます。
Topics
〔超音波エラストグラフィを用いた筋スティフネスの解明〕
筋電図では筋の活動量、超音波エラストグラフィでは筋スティフネス、いわゆる筋の硬さを剛性率 (shear modulus)として定量化することができます。
現在、両研究手法を同時に用いて、随意的な運動時の筋動態特性を網羅的に評価する研究を行っています。