特集

ドイツ視察研修:日独の工学系女子学生20名が共同でドイツの生産現場等を視察しました。

ドイツ視察研修 概要

「日独の工学系女子学生による視察プロジェクト」の一環として、「ドイツ技術者協会(VDI) 女性技術者ネットワーク」の運営協力のもと、ドイツの大学で工学を学ぶ8名と、奈良女子大学工学部4回生の12名が、現地での共同生活を通じて交流を深めながら、企業や研究機関の視察を行いました。

ドイツ研修プログラム期間2025年9月21日(日)〜 9月28日(日)  (渡航期間 2025年9月19日〜9月30日)
訪問先都市フランクフルト、ビーレフェルト、ハノーファー、ドレスデン 他 
参加者奈良女子大学工学部より参加:4回生12名、引率2名。VDIより参加:ドイツの工学系大学で学ぶ女性 8名、引率のエンジニア2名
協賛企業​DMG森精機株式会社、住友電気工業株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社、 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント、 ソニー株式会社、ソニーグループ株式会社、 Nikon SLM Solutions​ (ドイツ)、Fuchs Gruppe (ドイツ)
共同運営ドイツ技術者協会 (Verein Deutscher Ingenieure. e.V. 、以下 VDI )

この記事では、「日独の工学系女子学生による視察プロジェクト」の一環として実施した、「ドイツ視察研修プログラム」について説明しています。「日独の工学系女子学生による視察プロジェクト」については下記の記事でご確認ください。

プログラム日程の紹介

9/21(⽇)ドイツの参加者と合流、キックオフDAY。「 Intercultural Seminar I 」等のワークショップを受講
9/22(月)EMOハノーファー2025 国際機械展 訪問(DMG森精機株式会社様提供プログラム)
9/23(火)ビーレフェルト応⽤科学⼤学(HSBI) 訪問、ニコンSLMソリューションズによる「3D積層造形」講座
9/24(⽔)デトモルト野外建築博物館(Open Air Museum Detmold)訪問と学芸員によるドイツ歴史的建築の解説ツアー
9/25(木)Fuchs社(EU最大の調味料メーカー)訪問、⽣産⼯場⾒学。参加者で料理して昼⾷を準備
9/26(金)フォルクスワーゲンの組立工場「透明な⼯場(Gläserne Manufaktur)」⾒学、VDI 女性技術者ネットワークのコングレス開会プログラム参加@ドレスデン工科大学
9/27(日) 「 Intercultural Seminar II 」受講、VDI⼥性技術者ネットワークコングレス、授賞式&閉会式に参加
9/28(日)VDI 女性技術者の会ドレスデン支部長とゼンパー・オペラ見学&ドレスデン市内ガイドツアー
9/28訪問 ゼンパー・オペラ

参加者の日誌から:Pick-up

9/21(⽇)ドイツの参加者と合流、キックオフDAY。「 Intercultural Seminar I 」等のワークショップを受講

ドイツの学生たちとセミナーを受講し刺激を受けた。ドイツの子たちには多様なルーツがあって、十人十色それぞれの自分の考えを持っている。食べ物にしても一人ひとり選択していて、砂糖抜いている子、ベジタリアン、ハラルなど、日本では中々ない経験だった。ドイツの子たちと話していると日本人は人種、年齢、受けてきた教育なにもかも似通っていると感じた。全てが似ているからこそ、そこから外れることを恐れて、日本人は外国人と比べて人の目を気にする傾向にあるのかなと思った。食事に関して、政治に関して、教育に関して、他の国に関して、もっと興味を持って自分なりの選択をすることが大事だと感じた。

9/22(月)EMOハノーファー2025 国際工作機械展 訪問(DMG森精機株式会社様提供プログラム)

この日は6:30に起きて朝食をとり、早めに出発した。EMOではまず、DMG MORIのブースを訪問した。去年、伊賀工場を見学した際にも5軸のマシニングセンターの精度や巨大な鋳型を作る機械の迫力に感動したが、今回はそれに加えて、自動化されたラインや非常に精巧な鋳型を作る機器を目にしてさらに驚かされた。機械が連携して動く様子はまるで生きているようで、技術の進歩を実感した。スタッフの方々の丁寧な説明も印象的で、学びの多い時間だった。その後は写真を撮ったりスタンプラリーを楽しんだりした。人工関節のブースでは対応してくれた方がとても優しく印象に残っている。EMOを見て回ったときは、グルグルと回る椅子の体験や、VDIのブース、ロールスロイスジェットエンジンなども迫力があり、機械技術の奥深さを感じた一日だった。

EMOの食事会ではDMG森精機の廣野さん(※DMG森精機株式会社 執行役員 AM統括担当 兼 DMG森精機Additive株式会社 副社長 廣野 陽子 氏)が右席に来てくださり、他の三面にドイツで出会った友人達、という席順で緊張したが、ドイツの友達の質問や姿勢が日本人とは違い具体的で積極的だったため参考になった。また廣野さんのエネルギッシュなキャリアについてのお話に憧れ、まさに我々のロールモデルだと思った。廣野さんのお話で、スピード重視のアメリカと秩序重視のEUの間に日本人が入っていつも調整している、ということが印象的だった。自由時間には他の日本の会社のブースにも訪問し、日本人の技術者の方々とお話しした。 工作機械業界でこのような展示会があるのは知っていたが、実際に訪問すると働く人の像が具体的に見えて解像度が上がった。

9/23(火)ビーレフェルト応⽤科学⼤学(HSBI) 訪問、ニコンSLMソリューションズによる「3D積層造形」
ドイツの大学からの参加者のうち2人がHSBIで学んでいるそう

今日はビーレフェルト応⽤科学⼤学に訪問し、まずは女性の平等や教育支援制度について学びました。ドイツではファミリーフレンドリーな体制など、日本以上に支援が整っていると感じました。そして、その支援を直接受ける立場ではない学校の学生たちも、その仕組みをよく理解していることに驚きました。少数派の女性一人の力では社会を変えることは難しいですが、200万人の組織になれば変えられるという言葉がとても印象的でした。さらに、ビーレフェルト工科大学についても学びました。ドイツやアメリカでは、PBL(Project Based Learning)がエンジニア教育の基本となっており、大学の授業以外にも半年間の企業インターンシップを経て卒業するという仕組みがあるそうです。とても実践的で優れたシステムだと感じました。研究室見学では、医工学エリアの研究室を見せてもらい、自分たちの学校でやっていることと同じところや違いを感じ、とても面白かったです。最後に、レクチャーが終わった後に拍手ではなく、テーブルをノックするのがドイツ式だと知り、面白い文化だと思いました。これまで知らなかった習慣に触れ、視野が広がった一日でした。

NIKON SLM Solutionsの3Dプリンターに関するお話では、金属も積層できるという点が特に興味深く、チタンでできた球体も積層構造であるという説明を聞き、その精密さと仕組みの面白さに感動しました。

今回お話しくださった女性技術者の方の、柔軟で自分らしいキャリアパスを見つけられたというお話しもとても興味深かったです。3D金属積層について、ドイツの学生は初めて技術に触れる子もいて、たくさん質疑の時間を設けてくださいました。工学部では、DMG森精機さんとの連携授業で金属積層について少し知っていたので、英語でも難しい内容が理解できたり、質問し合うことができてドイツで工学の授業を受けている学生になった気分でした。

9/24(水)デトモルト野外建築博物館(Open Air Museum Detmold)訪問と学芸員によるドイツ歴史的建築の解説ツアー

デトモルト野外博物館では昔のドイツの建物(家や家畜小屋)を見ることができ、馬・ガチョウなどもいた。水車の建物で小麦をすりつぶしていた装置は日本でもお米の籾をとるために昔使われていたものととても似ていて驚いた。模型でしか見たことがなかったが、実際にはとても大きな力が水力で生み出されているとわかった。弥生時代の頃の建物は日本(日本でいえばもう少し後の時代ではあるが)と作りが似ていて、同じような歴史を辿って今があるのだと知った。家を暖かくするための煙を使って肉などを燻製にしており、天井高くに吊るしているのはネズミやヒトに食べられないようにするためだと聞きくすっと笑ってしまった。お昼ごはんはドイツのメンバーがアラブ料理店に連れて行ってくれた。ハラルやベジタリアンのメンバーにとってはよく行くお店だそう。初めてのアラブ料理はとてもおいしかった。デトモントは外国人観光客があまりいない町で、地元の方ばかりといった感じで新鮮だった。

9/25(木)Fuchs社の工場見学 (スパイス工場)、料理WS、ドレスデンへの移動

スパイス工場を見学し、こんなにも間近で生産の様子を見られることは日本ではあまりないだろうと感じました。髪の毛が入らないように保護したり、入場の際に風で塵を落としたりといった対策はありましたが、工場内でマスクを着けていなくてもよい雰囲気であったことに、文化の違いを感じました。まさかドイツで醤油が作られている様子を見学できるとは思っていなかったため、とても驚きました。工場全体がスパイスの香りに包まれており、見学が終わるころには鼻が少し麻痺したような感覚になっていて、面白い体験でした。また、お昼ご飯はドイツの学生たちと一緒におにぎりや海苔巻きを作りました。試行錯誤しながら作るのは大変でしたが、とても楽しかったです。おにぎりを作ったことがないと言っていた子が喜んでいる姿を見て、私も嬉しい気持ちになりました。

9/26(金)フォルクスワーゲンの組立工場「透明な⼯場(Gläserne Manufaktur)」⾒学、VDI 女性技術者ネットワークのコングレス開会プログラム参加@ドレスデン工科大学

朝からフォルクスワーゲン社に工場見学へ行った。車の工場と言えば色んな人たちが部品をチェックしながら部品を組み立てていく想像をしていたが、ほとんど人が常駐しておらずすべてを機械が行っていて、最先端の技術を感じた。色んな車が展示されており、最先端と歴史を感じる場所だった。VDIのカンファレンス開始まで時間があったため、ドレスデンの旧市街をドイツのメンバーが案内してくれた。そして夕方以降からはVDIのカンファレンスに参加した。英語も段々と分かり始めたくらいだったが、難しかった。しかし、ヴィーネケ先生(※VDI 女性技術者の会共同会長、本プログラム引率)が私たちを壇上で紹介してくれて、どこに行っても色んな人たちに助けてもらい、懐の深さと優しさを感じた。

この日は、さまざまな分野で活躍する女性エンジニアの方々からお話を伺う機会がありました。実際に現場で働く方々の生の声を聞くことができ、とても貴重な時間となりました。それぞれの方が自分の専門分野に誇りを持ち、情熱をもって仕事に取り組まれており、その姿勢が強く印象に残りました。お話を聞く中で、私自身も将来に対する意欲が一層高まりました。 特に印象に残ったのは、「女性がエンジニアリングを利用して社会をより良くしていく」という言葉です。これまで、エンジニアリング分野は男性中心というイメージを持っていましたが、女性ならではの視点や感性を活かすことで、新たな価値を生み出せるという考え方に深く共感しました。

9/27(土) 「 Intercultural Seminar II 」受講、VDI⼥性技術者ネットワークコングレス、授賞式&閉会式に参加

私たちの研修を統括するワークショップ(Intercultural Seminar II)が開かれ、初日と同じ先生が来てくれた。私たちは約1週間を一緒に過ごす中で、それぞれのバックグラウンドや文化を知り、私たちの距離を縮めていった。その中で、感じた様々な経験を共有して、互いを知っていった。この研修で女性技術者とは何たるかを知ることが大事だと思っていたが、この研修で一番大事なことは違うバックグラウンドや文化を知り、共感していくことだったのではないかと感じた。

コングレスでは、昼食後すぐのスロットのセミナー、Program for Womenを受講したとき、講義自体は30分ほどで終了し、講義時間の半分以上が質疑応答に当てられていたのが印象に残った。日本であれば質疑応答時間はおまけのような感じでついてくるイメージがある。やはりドイツの方々は自分事として話を聞き、自分の意見を持ち、それを言葉に出すことができる点で日本人とは全然違うと思った。また、日本人はうなずきながら話を聞く人が多いなと感じた。これまでのプログラムを振り返るような講座も受講し、ドイツの方々が折り紙をとても楽しんでくれていたことやプログラムを楽しんでいたということを知ることができてとても嬉しかった。

夜は、VDIイベント閉会パーティーに出席しました。博物館ホールを会場にするという発想が粋だと思いました。今までドイツ側メンバーとコミュニケーションを多く取り仲良くなった集大成がここで得られたと思います。一生忘れられない経験になりました。

参加した学生の感想

今回のドイツ研修を通して、文化・社会・技術の多様な面から多くの刺激を受けました。初めてのヨーロッパで、言語や生活習慣の違いに戸惑うこともありましたが、それ以上に自分の視野を大きく広げる貴重な経験となりました。企業訪問では、DMG森精機やニコンなどの最先端技術に触れることができ、製造業のグローバルな展開とものづくりの奥深さを実感しました。また、大学訪問や女性エンジニアの講演では、専門分野に誇りを持って働く方々の姿に強く感銘を受けました。性別や国境を超えて活躍する姿を目の当たりにし、自分自身も将来、社会の中で誰かの役に立つ仕事をしようという思いがより一層強まりました。さらに、現地の学生との交流を通して、言語だけでなく考え方や価値観の違いを実感しました。自分の意見を持ち、それを相手に伝える力の大切さを学び、今後は語学力だけでなく、論理的に考える力や表現力も高めていきたいと感じました。

この交流を通して私が気付いたことは、日本にいる私は周りの反応を気にしすぎているということです。ドイツの学生が、日常の中でキャリア、食事、生活リズム、政治などに関して、一人ひとりが強い意志を持っていることが何より印象に残りました。自分がしたいと思ったことを、「普通」と異なるからという理由で諦める必要はないと感じました。また、多様性という言葉の重要性についても考えが深まりました。日本にいると、基本的には国籍やルーツ、受けてきた教育が同じであるため、多様性と聞くと性別の多様性のイメージが強くありました。今回、ドイツの学生と長い時間を共有し、話し合いを重ねる中で、今まで考えもしなかったことに対して意見を求められる場面が多くあり、日本人学生は回答に困ることもありました。ドイツの学生がそれぞれの問いに対して強い意志を持って回答していた背景には、日々出会う人々が全く異なるルーツを歩んできており、常に異なる考えと向き合っていることがあるのではないかと考えました。異なる環境で育ち、異なる意見を持つ人と議論することで、自分の考えが深まっていくことを実感しました。

このプロジェクトに参加することは、私にとって大きなチャレンジでした。朝から夜まで集団行動という日がほとんどでしたが、とても楽しい毎日を過ごせたことに自分でも驚いています。観光では訪れることのないような場所で、ドイツの人々の日々の暮らしを見ることができ、貴重な経験になりました。このプロジェクトを通して、私も自分の意見を持ち、それを言葉にできるようになりたいと思いました。そのためには、物事ひとつひとつについて自分の頭の中でかみ砕いて理解し、考えなければならないと感じています。この姿勢が、ドイツの学生と過ごした日々の中で一番大きく感じた違いでした。日本人だからということではなく、私自身がなかなか意見を持ったり発表したりすることが得意ではないタイプなので、より強く感じたのだと思います。参加するまでは、工学を学ぶ学生として何か違いや目指すものを知りたいと思っていましたが、その前に、人として見習いたいと思う点をたくさん見つけられた10日間でした。毎日が充実していて、参加して本当に良かったです。日独プロジェクトが今後も奈良女子大学工学部のイベントの一つとなることを願っています。

奈良女子大学工学部